葉加瀬太郎の曲名でも知られているエトピリカ。
エトピリカとは、アラスカやシベリアの北極海沿岸から北日本、ベーリング海の島々、アリューシャン列島で見られる海鳥・留鳥です。
エトピリカとはどのような生体を持つ鳥なのでしょう。
エトピリカとは
鮮やかな飾り羽とオレンジ色の脚・大きなくちばしが魅力のエトピリカ。
エトピリカとはチドリ目・ウミスズメ科に属している絶滅危惧種の鳥です。
エトピリカの由来は、アイヌ語の「くちばし(etu)」「美しい(pirika)」となっています。
大きさは全長40cm、翼を広げると幅65cm、体重約750g程度です。
エトピリカのくちばし
魚を捕る・運ぶのに適した大きなくちばしを持つエトピリカ。
オレンジのくちばしには、縦線が入っていて意外とシャープ!
翼は比較的短く、潜水に適しています。
そんなエトピリカの餌には、イカナゴやニシン、イカやオキアミなどがあります。
カニやキュウリウオの魚も大好物です。
エトピリカの羽毛と色の変化
出典:www.ehhon.com
エトピリカの羽毛は「夏羽」と「冬羽」があり、夏と冬では羽の色からくちばしの色、胸の羽の色も変化します。
普段は黒い羽毛ですが、夏羽は金色の飾り気に白っぽい顔、くちばしの色も明るくなります。
冬羽は飾り羽なしで灰色っぽい顔に変わるのも特徴的。
因みに夏羽は「飾り羽が垂れ下がり、くちばしの根もとは黄褐色で鮮やかになる」ことから別名「花魁鳥」(おいらんちょう)と呼ばれています。
エトピリカの飛び立ち方
エトピリカは渡り鳥ですが筋肉質で体重も重くなる為、勢いよく滑走することはできません。
水面からも飛び立つ事はできず、水面を滑走してから飛び立ちます。
※滑空するときは、短い翼をパタパタして海面近くを飛びます。
エトピリカの生活
普段は海上で生活しますが、夏の繁殖期(4月~8月)には険しい断崖の上にある草原で営巣するエトピリカ。
エトピリカは集団で集まって、それぞれの巣を作ります。
巣作りは、浅い巣穴作りから始まり、そこに草や羽毛を敷き詰めて抱卵・育雛するものです。
※岩の隙間や地面の窪みを巣穴に利用することもあります。
親鳥が雛に餌を与えるまでの様子は、応援したくなること間違いなしです。
エトピリカの求愛行動
出典:1.bp.blogspot.com
エトピリカの求愛行動には、お互いのくちばしをカタカタと合わせるものがあります。
※オスはメスを泳いで追いかけて、クチバシをパクパクするものもあります。
1回で産む卵は1個で、夫婦で子育てをします。
雛は巣立ちまで巣穴の中で育ちます。
エトピリカの巣作り
雛が育つまで、およそ45日間抱卵。
巣立ちまでで計55日間子育てに奮闘するエトピリカ。
親エトピリカは、餌を捕まえると険しい岩場を登って雛に餌を与えます。
その間も、片方の親は敵が来ないように巣を見張るのです。
毎日寝る間も惜しんで雛を守り、必死に餌を与える姿はとても微笑ましいです。
エトピリカの子育て事情
雛が孵化することで、餌を運んで育てるエトピリカ。
親エトピリカが口や足で巣をつくり、くちばしに餌をぶらさげたまま断涯をのぼる姿にはハラハラドキドキ。
エトピリカは孵化してから2週間も経つと、350 g程度でふわふわの羽毛が生えてきますよ。
エトピリカの生息地
出典:pds.exblog.jp
エトピリカは北太平洋の亜寒帯海域に生息している海鳥(留鳥)です。
地図で言うと、ロシアと日本(北日本)とアメリカ(カリフォルニア州より北の西海岸)の間の海域になります。
日本では北海道道東の島々で繁殖しているようです。
総個体数は240万羽程度で広く繁殖していましたが、1970年代からは激減。
今では繁殖が確認できる程度に減ってしまいました。
エトピリカの羽の防水機能
エトピリカを含め、海鳥の羽には防水のような機能があります。
しかし、海に浮かんでいる油がつくと、その羽の防水性は損なわれます。
私達が海で遊ぶときには、ゴミを捨てたりしないようにしましょう。
エトピリカの観察
限られた場所でしか生息したいエトピリカは、観察するのも大変!
そんなエトピリカは、繁殖期以外は陸に上がらないので、観察は繁殖期がねらい目!
身近では、葛西臨海水族園などで卵を産んでいないペアのみ求愛行動を見ることができます。
因みに、葛西臨海水族園ではエトピリカの巣穴の様子を展示場のモニターで見ることができるようです。
卵を温めている親エトピリカから、雛が育つ様子、子育てを終えるまでを観察してみても良いですね。
エトピリカのバードウォッチング
出典:birds.mints.ne.jp
エトピリカの観察は、北海道の根室落石でのバードウォッチングもおすすめ。
落石ネイチャークルーズでは、海上を飛ぶエトピリカも間近で観察できるかも!?
絶滅危惧種のウミスズメ類は、釧路よりも根室で観察することができます。
他にもウトウやコアホウドリ、チシマカラス、ケイマフリなどの野鳥も観察できるかもしれません。
落石ネイチャークルーズでの観察
運行は1日2便。コースはA・Bコース、沖合コースが楽しめる落石ネイチャークルーズ。
ただ落石ネイチャークルーズは、時期や天候などによっても運航できるかどうかは変わるので要注意。
クルーズは前日午前中迄の予約制で、料金は中学生以上の大人で(税込)8000円、5年生以上(保護者同伴)の子どもは(税込)5000円です。
※チャーター船は3名以上~(出航時間自由・2日前迄受付)で、貸切についても相談可能。
デメリットとしては、船酔いには要注意。トイレ設備も無いので、出港前に済ませておくことが大切です。
写真は三脚を使わない方法で行ってくださいね。
まとめ
葉加瀬太郎の曲のイメージ『空を飛んでいきたい』『大空を目指す』そのもののエトピリカの生活。
「美しいオレンジの大きなくちばし」が特徴的なエトピリカは、観察するだけでも十分楽しめます。
昔はたくさんいた海鳥(留鳥)も、今では絶滅指定危惧種の仲間入り。基本的に飼育は難しいです。
それでもエトピリカ愛に溢れている人は、葛西臨海水族園や落石ネイチャークルーズなどで観察してみるのもいかがでしょうか。